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老ヴォールの惑星

2007年03月13日 21:24

第六大陸』の小川一水、初の短編集。
2006年度版SFが読みたい』で発表された読者が選ぶベストSF2005国内篇第1位。

老ヴォールの惑星 老ヴォールの惑星
小川 一水 (2005/08/09)
早川書房

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全体的に日本人離れした作品だなという感想を抱いた。四篇ともどれも趣きが異なっていて飽きが来ない。


ギャルナフカの迷宮
反社会的な政治犯として一枚の地図とともに地下迷宮に落とされた元教師テーオ。地下には人数分の水場ときのこみたいなものが生える餌場しかない。生き残るために水場と餌場の記されている地図の奪い合いが起こり、人々は疑心暗鬼になっていた。一部の人間は、食べ物を求める欲望を抑えきれずに、野蛮な生肉食いと化していた。テーオはこの無秩序な迷宮に、文明的な社会を作ることを決意した。

閉鎖された厳しい環境下での生への渇望がナマナマしくてエグい。アイディアとしては嫌いじゃないけど。


老ヴォールの惑星
巨大な海の惑星。その表面に生きる知的生物。体から光を発することにより、情報を種全体で共有することができる。多くの知識を溜め込んだ長老ヴォールは若者に、空の星のひとつに彼らの惑星サラーハに似た世界がある事を教えてその生を終える。サラーハに危機が迫ったとき、残された彼らは老ヴォールが発見した星を探し出そうとする。

この本のなかではやっぱり表題作であるこの短編が好き。地球起源の生命とは根本から異なる知的生命体の不思議な生活様式の描写に惹かれる。


幸せになる箱舟
火星まで生活圏を広げた人類は、木星で地球外知性体によって作られた自動機械を発見した。ビーズと呼ばれるようになったそれは、木星の大気を採取し彼らの母星に向かって超高速で射出していた。このままでは木星の重量が変化し、近い未来太陽系の惑星の軌道がずれていってしまう。人類はビーズを作り出した知性体クインビーと交渉するため、専門家達を特使として送り込んだ。危険と困難を極めると思われたそのミッションは、予想に反してとんとん拍子にことが運び、うまく行き過ぎることに疑問を抱いた時・・・。

人類を危機に追い込む地球外生命体による太陽系への干渉+人間の望んだ夢を見せてくれる未知の星。辛めに言うと、既出のアイディアを二つくっつけただけかも。


漂った男
未開の惑星の偵察任務中、タテルマの乗った機は墜落。海しかない巨大な惑星パラーザで漂流してしまった。救助を要請したが、広大な面積のため惑星のどこを漂っているのか特定できず、発見は絶望的だった。栄養価の高い海の水と空間距離に影響されないU(アルティメイト)フォンを命綱に、タテルマは漂流し続ける。

ほとんど何も起こらないことがポイントのストーリー。x年も独りぼっちで海を漂うなんて気の遠くなるような話だ。タイトルから何故か「嘔吐した宇宙飛行士」を連想してしまったのは内緒。



関連:小川一水の作品の感想
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コメント

  1. たんとん | URL | 8wbC6KiY

    どんもー。
    「老ヴォールの惑星」は私も読んだ筈ですが、何故か表題作以外記憶にありませんw
    その表題作も、折角異星生物を出したのだから、生態だけではなく価値観あたりで人間と相容れないなにかが在ると、もっと良かったような気がします。
    いあ、盛り込みすぎるとテーマがぶれるのであれで良かったのかな?w
    異星生物の行動原理がすんなり納得が行く所で、微妙な違和感が在ったものですから。(まあ、きにしないでw)
    で、私が以前に書いた、「小川一水はSF的アイディアや舞台は見せるだけにしか使わない」を取り消させてくださいw
    なんかね、日本の作家で久々に「SFらしいSF」を読ませてもらった、って感じでした。

  2. みね尾 | URL | NJl7JW7A

    >折角異星生物を出したのだから、生態だけではなく価値観あたりで人間と相容れないなにかが在ると

    あ、それは私もチラッと思いました。最後の、人間との会話のシーンは、ちょっと普通すぎるな、と。なんで異星の生物とあっさり通じあえるのか(言語という意味だけでなく、本質的な思考回路とか)、腑に落ちない感じはしましたね。
    テトラントが人間に「カガクギジュツってなに?」と言葉の意味を聞いたりしているけど、ヴォールたちが知らない観念をそもそもどうやって光に訳したのか、っていう疑問が…。

    たんとんさんが仰っていたように、第六大陸ではSFは背景でしかなかったけど、この短編ではSFっぽさが全面的に押し出されていている気がしますね~。

  3. ユキノ | URL | -

    迷宮はこわい

    「第六大陸」よりこちらえお先に読んでしまいました。

    ファーストコンタクト小説はあまり読んでいないので面白かったです。
    全編SFのにおいがしてました。

  4. みね尾 | URL | NJl7JW7A

    トラックバックありがとうございます。

    私はファーストコンタクトモノが結構好きなんですよ。地球上の生物と進化の過程が根本から異なる異星の生命体を、どれだけ嘘っぽくなく描くことができるかで、作者の力量を量れてしまうといっても過言ではないのかもしれません。
    「第六大陸」の世界も楽しんでください~。

  5. ufit | URL | -

    ギャルナフカとゲーム理論

    著者の作品は本書が初めてでしたが、最近の日本人作家では野尻抱介とともにSFらしいSFを書く作家だと感じました。
    (海外の作家ではロバート・J・ソウヤー)

    この中では、「ギャルナフカの迷宮」がゲーム理論における囚人のジレンマを思い起こさせる設定からストーリーが展開していったので印象に残っています。

    今日、書店で第2短編集の『フリーランチの時代』が新しく出ていたのを発見し即買いしました。
    これにもファースト・コンタクトを描く作品が登場するようなのでこれから読むのが楽しみです。

    このところSFを読んでの記事を書くことも多いので、しばしば訪れることになると思います。
    よろしくお願いします。

  6. みね尾 | URL | 22hNL7Yc

    小川一水の新しい短編集、出てたのですね。未チェックでした。近いうちに本屋に探索に行ってきます。最近本の購買欲が上がり気味なのでちょうどいいかも。だけどその前に新しい本棚が必要かな。

    さいきんめっきり更新頻度が落ちていますが、こちらこそよろしくお願いいたします。私もufitさんのSF記事楽しみにしてますね。

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「老ヴォールの惑星」小川一水

老ヴォールの惑星小川一水[:読書:]中編4本のうち、2本がファーストコンタクトものなにごとも諦めない心を持った人たちが逆境にめげず力を合わる(もしくは一人でも)頑張る感じが伝わってきます。全体的にあまり明るくないのでメンタル面が元気な時に読むことをオススメし




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