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第六大陸

2007年03月07日 21:38

ロケットガールからの連想ゲームで第六大陸。

第六大陸〈1〉 第六大陸〈1〉
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第六大陸〈2〉 第六大陸〈2〉
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時は2025年。砂漠・海底・高山・南極・・・過酷な環境下での建設を得意とする日本企業御鳥羽総合建設に新しい仕事が依頼された。桃園寺グループのエデン・レジャーエンターテイメント(ELE)社が要求してきたのは、なんと月面基地の建造だった。

しかし建築資材を月に打ち上げるには想像以上の費用かかる。その額およそ一兆二千億円。莫大な輸送費のコストを下げるためには、天竜ギャラクシートランス社が極秘で開発中の新型ロケットエンジン、トロフィーが必要不可欠だ。日本企業三社による予算一千五百億円、工期十年の巨大プロジェクトが始まった。

御鳥羽総合建設を育て上げた社長御鳥羽拓道、熱意溢れる若手社員青峰走也、天竜ギャラクシートランス社を創設した野心家八重波竜一、トロフィーエンジンの生みの親である泰信司、ELE社の特別監査員保泉玲花、中国の月面基地滞在隊員達。多くの人間とNASAや世界までもを巻き込んだ第六大陸プロジェクト。その中心にいたのは、桃園寺グループ会長の孫娘、桃園寺妙、プロジェクト開始当時十三歳の少女だった。


月面基地建設のためのステップ―調査・設計・開発・輸送・施工―が緻密に進められていく描写は、近未来SFというよりまるでヒューマンドラマのドキュメンタリーを見ているよう。資金調達、妨害工作、デブリ、事故、世論など次々に表面化する問題を乗り越えて、第六大陸が完成に近づく工程には目が離せない。国家の宇宙開発機関ではなく、日本の民間企業に月面基地の建設を行わせることによって、人類の月進出・開拓の夢を別の切り口から魅せてくれる。


ここからネタバレ。
何故小娘一人のために一千五百億円もかけて月面に結婚式場を作るのか、っていう根本的な問題はさておき。

『第六大陸』は日本企業による月面開発の苦労話に終わっていない。月の地中からは謎の金属繊維質が発見されるし、怪電波が検出されたりもする。そしてラストでは、地球外知的生命体による巨大建築物が月面に現れ、その施工者が月に向かってきていることが明らかになる。

だけど個人的にはこれは余計な設定だったんじゃないかなと思う。

地球外生命体の存在がなければ、大風呂敷を広げるわけでもなく、SFとしてはまとまりすぎた小説になってしまっただろう。だがそれだけでも十分通用するリアリティが『第六大陸』にはあったと思う。残念ながらドキュメンタリーの人間臭さと、突如現れるスターロードの異質さとのバランスが取れてない気がするのだ。第六大陸建設の描写には力を入れたのに、未知の施工者に関してはその実態を暴くことを放棄してしまっている。画竜点睛を欠くというか蛇足だったというか。


地球外生命体による巨大建造物が太陽系に現れるというアイディアや、宇宙開発問題に真っ向から取り組む姿勢は、野尻抱介の影響を受けているんじゃないかなと思わされる。あとがきにあたる『「第六大陸」沿革』の謝辞に野尻抱介の名前が出てきたし。(野尻抱介の『太陽の簒奪者』は2002年の作品で、『第六大陸』が2003年だと考えると、直接的な関連は…うーん)

ちなみに表紙とかのイラスト、どこかで見たことがあると思ったら、プラネテスの作者である幸村誠だった。なるほどぴったりだ。


関連作品の感想:
小川一水
野尻抱介
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コメント

  1. ユキノ | URL | -

    ちょうど

    小川 一水を読んでいます。
    違う作品ですが。。

    月面基地ってスケールが大きそうですね。
    みね尾さんの書評を(特にSF本)いつも参考にさせて頂いてるのですが
    今回は悩む~「買い!」でしょうか?

  2. みね尾 | URL | NJl7JW7A

    >書評を(特にSF本)いつも参考にさせて頂いてるのですが

    これは嬉しいお言葉。いやーなんだかプレッシャーを感じますね(笑)。
    第六大陸はスケールは大きいけどちゃんと地に足が着いたSFで、なかなか引き込まれますよ。
    個人的には「買い!」かな。でも責任は持てません・・・(弱気)。

  3. たんとん | URL | 8wbC6KiY

    どんもー、なんか2作続けて私のぽろりと話した作品が取り上げられたよーな(;・∀・)
    うれしいよーな、こっぱずかしいよーな。

    「何故(略w)月面に結婚式場を作るのか」ってのは、月に行きたいけど行く理由が無いと内心忸怩たる思いを抱いてる人には、突破口に成り得るかもしれないアイディアだと思うんですけど?
    その辺の記述は、言われてみれば淡白でしたね。私には、説明不要なんで気が付きませんでしたw

    終盤のあっさりした部分も、実際の仕事では、あんなものかと思います。人類全体の問題ですから、建設やレジャーの一企業が携われる部分は殆ど無いでしょう。

    なんか、擁護ばかりしてる・・・。小川 一水は、リアルさ(←SFでリアルって言ってる時点でなんか可笑しい気がw)や人間を書くのは随一けど、SF的アイディアや舞台は見せるだけにしか使わない(つかえない?)気がします。
    ライトノベルに食い足りない人、脇の活躍やカッコイイ大人が好きな人にはお勧めかと思います。

  4. みね尾 | URL | NJl7JW7A

    以前のたんとんさんのコメントに触発されたので「第六大陸」の感想を書いてみましたー。

    月面結婚式場。私は結婚式とかに夢をあまり夢を持ってないダメな人間なんですけど(笑)、よくよく考えてみたら企業が作るレジャー施設としてはいい線いっている気がします。一生に一度(or数度)の大切な結婚式なら、大金かけて月で!って思っても不思議じゃないですね。なるほど~。そういえば海底で結婚式を挙げるカップルがいますからね。

    たしかに『第六大陸』の登場人物はカッコよかったです。個人的には泰が好きだったなー(涙。

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