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神狩り

2005年03月18日 00:00

神狩り 神狩り
山田 正紀 (1998/08)
角川春樹事務所

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前々からタイトルと作者に興味を覚えて惹かれてはいた。しかしなかなか本を買うところまでは行かなかった。以前紹介した『蹴りたい田中』の『やまだ道―耶麻霊サキの青春』に影響を受け、ついに購入したのが冬休み中の出来事。山田正紀の『神狩り』といえば、『やまだ道―耶麻霊サキの青春』でサキが崇拝した作品である。期待は大きかった。

山田正紀ってややライトノベルよりの作家というイメージが私にはあった。『NOVEL21 少年の時間―text.BLUE』の『ゼリービーンズの日々』を読んだ所為かもしれない。ところが、『神狩り』はちっともライトじゃなかった。冒頭の句はいきなりヴィトゲンシュタイン。目に飛び込んでくる言葉は「論理哲学論」「メタ言語」「論理記号」「関係代名詞」などなど。私は哲学者でも言語学者でも神学者でもなんでもない。はっきり言ってちんぷんかんぷんな言葉と観念に翻弄されるだけだった。

なんか凄そうだけど意味わかんない、これが初めて読んだときの正直な感想だった。しばらくしてまた読み直してみた。今度は分からない単語をちょっと脇に置いて読める程度の余裕は持っていた。読むのが二度目のはずなのに、ぐいぐいと引き込まれるようにして読んでしまった。相変わらず作品内で語られる言語の構造についてとかはさっぱりだけど、そこに引っかかったまんまじゃなくなった。もっと大きな視点で物語を見渡せるようになったというのだろうか。ぞくぞくした。神を否定して生きてきて、それなのに神が存在するという証拠を垣間見てしまったときのなんともいえないゾッとする感覚。人間の上位のレベルに存在し人間に干渉している神。人間に神のロジックを理解することは不可能。我々人間は神に遊ばれているだけなのだろうか。神のゲームに乗り、神を狩り出したとき人間は自由になれるのだろうか・・・。

数年前『聖書の暗号』という本を読んだときに感じた戦慄を思い出した。やっぱり私が一番怖いのは人間の理解を超えている上位の存在なんだと再確認させられた。


時間を置いてまた読み返してみたら、新しい発見が出来そうな予感がする。



『神狩り』の続編(『神狩り2 リッパー』)が29年ぶりに出たらしい。こんど是非読みたい。
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エントロピー またはキップル

2005年03月12日 00:00

熱力学用語のひとつにエントロピー(entropy)というのがある。簡単に言えば(分子の)乱雑さを示す。あちこちに散らばっていて混沌としていればいるほど、エントロピーは高くなる。熱力学には「孤立したシステムのエントロピーは減少しない」という熱力学第二法則というものある。要するに宇宙全体のエントロピーは減少せず、どんどん増大していくということだ。エントロピーが絶対最大値をむかえるまで・・・。

物体が固体→液体→気体に変化するときエントロピーは増大する。固体は分子がきちんと並んでつまっている状態だが、気体になると分子はてんでんバラバラに飛び交うからである。二種類以上のものを混ぜたときにもエントロピーは増大する。


この乱雑さの程度を示す言葉エントロピー、物理以外の現象にもよく使われる。

たとえるならば綺麗に整頓された机。
ペンはペン立てに。
文具はきちんと引き出しの中に。
本はまとめて積んであって。

ところがどうしたことだか徐々に机は汚くなってくる。
ペンがあちこちに散らばり。
本の山は崩れて跡形もなく。
文具ともなんともよくわからないものが堂々と机の上を占め・・・。
仕舞いには机の表面が見えなくなっていたりする。


エントロピーが増大するとはこういうことだ。


机が汚くなるのも、部屋が散らかるのも、エントロピー増大の法則によって定められた運命なのである。だから仕方がないのである。


ちなみに閉じてないシステムの中ではエントロピーを減少させることが出来る。ただしそのためにはシステムの外部からエネルギーを貰う必要があり、全体図を見たときにはエントロピーは増えている。たとえば、冷凍庫で水を氷にすると水のエントロピーは減少する。しかし、冷凍庫というシステムを見ると、冷凍庫は有効なエネルギーを熱という使えないエネルギーの形に変化させてしまっていて、結局はエントロピーは増えていることになるのだ。


フィリップ・ディックのSF『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』には「キップル(kipple)」という言葉が出てくる。これはエントロピーっぽい概念を指すものだと私は解釈している。どんどん増えていくキップルに人は打ち勝つことが出来ないのだと・・・。

“Kipple is useless objects, like junk mail or match folders after you use the last match or gum wrappers of yesterday's homepape. When nobody's around, kipple reproduces itself. For instance, if you go to bed leaving any kipple around your apartment, when you wake up the next morning there's twice as much of it. It always gets more and more.” He goes on to say that, “…the First Law of Kipple [is that] ‘Kipple drives out nonkipple' … … [one] can roll the kipple-factor back… No one can win against kipple, except temporarily and maybe in one spot, like in my apartment I've sort of created a stasis between the pressure of kipple and nonkipple, for the time being. But eventually I'll die or go away, and then the kipple will take over. It's a universal principal operating throughout the universe; the entire universe is moving towards a final state of total, absolute kippleization.”

『Do Androids Dream of Electric Sheep』 より



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