--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

チグリスとユーフラテス:惑星でただ一人 最後の子供の悲しき復讐

2004年08月30日 00:00

「チグリスとユーフラテス」の余韻に浸っている所為で、いつも以上に私の文体が新井素子の影響下におかれてしまったな。
チグリスとユーフラテス チグリスとユーフラテス
新井 素子 (1999/02)
集英社

この商品の詳細を見る


友人に先日私は「似非新井素子ファンだ」と言われてしまった。私としたことが、第二十回日本SF大賞を受賞した新井素子の長編小説「チグリスとユーフラテス」の登場人物の名前を失念していたのだ。読んだの二年前の夏だし、っていうのは言い訳にはならない。おまけに数日前に「チグリスとユーフラテス」の文庫版をブックオフで購入していたということが、悔しさに拍車をかけた。ということで、私は意地でも「チグリスとユーフラテス」を読み直したかったのだ。

それにしても新井素子は。ほんとに恐ろしい設定を作り上げる。よくこんなに不気味なことを思いつく。ちょっと想像してみるだけで背筋に冷たいものが走る。

以下あらすじとネタバレを含む予定。そういうのを気にしない人は続きをどうぞ。
[ 続きを読む ]
スポンサーサイト

NOVEL21 少女の空間―text.RED:運命と時間と世間と己と戦う少女たち

2004年08月27日 00:00

NOVEL21 少女の空間 NOVEL21 少女の空間
デュアル文庫編集部 (2001/02)
徳間書店

この商品の詳細を見る


前回紹介した『少年の時間』の続編というか、対になる短編集。しかし、こっちのほうがSF純度が低い。六篇の短編中SFらしき作品は3.5作品。

小林泰三の「独裁者の掟」は完璧SF。小林泰三はこの間感想を書いた「ΑΩ」の作者だ。「ΑΩ」に比べ、凄惨な描写は少なめ(あくまでも少なめ)。てか、「ΑΩ」を読んでそういった感覚が麻痺しちゃったのかもしれない。人々の命運を背負い、心を凍らせて、目的を達するために手段を問わない総統。総統が自己と周りのものを犠牲にしてまで遂げたかった目的とは一体なんだったのだろうか…。二つの視点をオーバーラップさせる手法が見事。

青木和の「死人魚」は、微妙にSFなのかもしれない。でも、違うかもしれない。どちらかといえば、伝奇とかホラーの類だろうか。山登りに行った青年が迷い込んだ村。そこで出会った村八分にされた少女。少女が大切に育てている赤ん坊。排他的な村に、青年は影響を与えることができるのだろうか。

篠田真由美による「セラフィーナ」もSFじゃない。怪奇系ホラーとでも呼ばしてもらおうか。ミステリアスなアンティークショップの女主人の語る、高級娼婦の肖像画にまつわる話。SFじゃないけど、この話のラストは妖艶でいい感じ。

大塚英志が白倉由美ノベライズした「彼女の海岸線」。獣耳&シッポ付きの女の子と暮らした男の子の話。これは、いまいちわからなかった。ネコ耳とかネコ尻尾ならOKなんだが、キツネってのがね。残念ながら萌えませんでしたなぁ。

「アンドロイド殺し」は二階堂黎人のSF。タイトルからしてSFっぽさが匂ってくるね。これは、展開が二転三転…挙句に四転ぐらいする。ラストのほうは結構ひねっているんだろうが、ちとひねり方が読者の予想の範疇に入ってしまっているのが惜しい。ちなみに、この短編に登場する未来の道具・機械などの元ネタSFを探すのも一興かと。

最後の短編は梶尾真治の「朋恵の夢想時間(ユークロニー)」。まあ、タイムトラベルものだろう。何気なく取った行動の所為でその後の人生悔やみ続ける。そういった誰にでもあるだろう過去の思い出。しかし、過去とはけして取り返せないもの…。過去に肉体を送り込むタイムトラベルは、エネルギーを使いすぎる。ならば、精神だけなら…?過去は変えられるのか…?



ハイブリッド・エンターテイメントの名にふさわしく、あらゆるジャンルのものを、いろんな作者の作品のを読みたいときにオススメ。

NOVEL21 少年の時間―text.BLUE:ゴールデンブラウンの日にはドラゴンを退治する

2004年08月17日 00:00

NOVEL21 少年の時間―text.BLUE NOVEL21 少年の時間―text.BLUE
デュアル文庫編集部 (2001/01)
徳間書店

この商品の詳細を見る


「少年」をキーワードに集められた六つの短編。この本は、厳密に言うとSFじゃない。ハイブリッドアンソロジーと言うらしい。ようは、今の作家たちによるジャンルを問わない短編集だ。それでもSFっぽい作品は結構含まれている。

収録されている作品とその作家は以下のとおり。

鉄仮面をめぐる論議(上遠野浩平)
夜を駆けるドギー(菅浩江)
蓼喰う虫(杉本蓮)
ぼくが彼女にしたこと(西沢保彦)
テロルの創世(平山夢明)
ゼリービーンズの日々(山田正紀)

まあ、「ぼくが彼女にしたこと」以外はSFと呼んでしまってもいいんじゃないだろうか。これはなんというか、アダルトちっくというかなんというか…。

「夜を駆けるドギー」は近い将来のネット上のコミュニケーションと、ペットロボット(AIBOみたいなもの)の問題点を提示する作品。某巨大掲示板風な会話などが、面白い。というかどことなくリアルで少し気味が悪いくらいだった。

「ゼリービーンズの日々」はなかなか好きだ。どこがどう好きなのかはうまく表現できないのだが。シオドア・スタージョンの「人間以上」をモチーフにしている。そう、どこかに障害を持っている人は、普通の人間以上の能力を代わりに得ているのかもしれないのだ。彼らは、三次元にとらわれないで現実を見ることができる。少年少女を厳しく取り締まる法律が施行される社会で、彼らは大人たちの悪意に立ち向かっていく。

上遠野浩平は「ブギーポップ」シリーズを書いている人だ。これまた不思議な能力を生まれついて持ってしまった男の叙事詩(?)である。彼に触れるものはすべて水晶化してしまう。この能力ゆえに、彼は孤独な兵器だった。

「蓼食う虫」は、すでにどこかで使われたテーマな気がする。人類が漂着した星は、人間の願ったものを具現化して与えてくれる…。

「テロルの創世」は人間の影として生きるクローン達の物語。オリジナルの人間のために生き、死んでゆく子供ら。人間とは何かを考えながら読むといいのかも(しれない気がする)。


全体として面白いが、やっぱり作品によって当たり外れがあると思う。

いつか猫になる日まで:日向ぼっこしている猫にあこがれる。でも私はけして抜けられない獣道を選んだ。

2004年08月16日 00:00

いつか猫になる日まで いつか猫になる日まで
新井 素子 (2005/04/28)
集英社

この商品の詳細を見る

いつか猫になる日まで

今日、吉祥寺の駅周辺をうろついて、BOOK OFFを見かけたのでつい入ってしまった。そこで、ここ三年ぐらい探していた本を見つけた。新井素子の「いつか猫になる日まで」である。

この本は、私が新井素子にはまるようになったきっかけだった。五年程前、図書室でSFチックな本を漁っていたときに見つけた。背表紙に「SFコメディ」と書いてあったので手にとって見た。SFコメディってどんなものだかあんまり想像できなかったが、タイトルに猫がついていることもあって思わず借りて読んだ。

コレが面白かった。文体が新鮮だった。それからである。私が新井素子の本を片っ端から読み出したのは。新井素子の小説はほぼ全部読んでいると思う。本も結構所有している。

ただ。昔の新井素子の本は今結構手に入りにくい。ここ数年発行されたものならまだしも、私が生まれたころの本となると古本屋めぐりして集めるしかない。そういうわけで、はじめて私が読んだ新井素子の本である「いつか猫になる日まで」を私はずっと捜し求めていたのである。こういう本との出会いがあるから、出かけ先での古本屋めぐりっていうのはやめられない。

さて、すこし「いつか猫になる日まで」の内容に触れよう。

「一人は統率を司どる者。一人は情報。一人は技術。一人は生命。一人は攻撃。そして、今一人は切り札」

不思議な運命に導かれた六人の若者が、地球を守るためそして宇宙人たちの戦争を終結させるため、ハチャメチャな戦いを挑む。その戦いに圧勝した六人は、さらにとてつもなく強大な戦うべき相手がいることに気がつく…。


この小説に登場する森本あさみという娘はテレパスなんだけど、私的に結構気に入っている。大人びていて、お嬢様っぽくて、かっこいい(気がする)。人の心を覗く前に必ず断わり、そして左眼を細めるのだ。この娘とお知り合いになりたいね。

[追記]
2005年春新装版発売。

ルー=ガルー:狼は絶滅した、少女は狼になった。

2004年08月13日 00:00

ルー=ガルー ルー=ガルー
京極 夏彦 (2004/11/19)
徳間書店

この商品の詳細を見る


人気作家京極夏彦の近未来SFサスペンス。
この本、四回ぐらい読み直したけどそれほど面白い。

綿密な世界観。
一癖も二癖もある、脇役と呼ぶには惜しい名キャラクター達。
緊張感に満ちた少女連続殺人事件とだんだん明らかになる真相。
後半のスピード感あふれる展開。
圧倒的なボリューム。

どれをとっても満足した。


ただひとつ言うならば、主人公(語り手)があまりにも役立たず。
京極堂シリーズの関口君もそうなのだが、なまじ脇役が個性的過ぎるから主人公が霞む。

天才だけどかなり抜けてる「都築美緒」。
男の子っぽいミステリアスな「神埜歩未」。
戸籍のない中国系拳法使い「麗猫」。
丁寧なしゃべり方をする占い葬式娘「作倉雛子」。

こんないい味出しているキャラに、主人公であろう牧野葉月は負けちゃってる。
実は私は無能な主人公ってあんまり好きじゃないんだけど。


もちろん、内容もなかなかいい。

データ上の現実と仮想のあいまいさ。
人に直接会わないでコミュニケーションの取れる生活。
死というものがリアルに感じられなくなった日常。
ネットワークに繋がることによって得る便利さと安心。
一方それを介して個人を監視することのできる社会。
人とのつながりの希薄になった世の中で、人のために戦う少女たち。

いかにも京極夏彦らしい、理論的な文には思わずイロイロと考えさせられる。
読み返してみて思ったけど、好きな本ベスト10に入るかもしれない。

ちなみに私が好きなのは、神埜と都築。
都築の紙一重ッぷりがいたく気に入った。

星を継ぐもの:月で五万年前の死体が見つかった…いったい誰?

2004年08月05日 00:00

星を継ぐもの 星を継ぐもの
池 央耿、ジェイムズ・P・ホーガン 他 (1980/05)
東京創元社

この商品の詳細を見る


はい、espiderはSFしてました。それはさておき。


もし、月探査に行った人類が、そこで宇宙服をきた正体不明の死体を見つけたらどうなるのだろう。とてつもないスケールのミステリーの始まりである。


人類が月で赤い宇宙服の死体を見つけた。その死体を調べた結果、とんでもないことが明らかになった。「彼」は五万年も前に死んでいたのだった。非常に人類に酷似した肉体をもつ「彼」。「彼」は地球人なのか、それとも異星からの訪問者なのか。人類は「彼」の謎をひとつずつ解き明かしていく。しかし、新しい発見は、また新たなる謎を呼ぶ…。

まさに壮大な謎解き。それが非常に理論的・科学的でとてもリアリティに満ちている。やっぱり、ハードSFも面白いなと思わせてくれる。(ハードSFとはSF<サイエンス・フィクション>のサイエンスの部分に重きを置いた作品)

まったく持ってゾクゾクする。ラストなんかは実に鳥肌ものである。すごいを通り越して怖くすらなってくる。

この「星を継ぐもの」はシリーズものだ。次巻でもどきもを抜くような展開が待っているような気がする。近日中に書店をはしごして続きを買ってこなければ。

マルドゥック・スクランブル:少女と銃の血みどろの戦い

2004年08月02日 00:00

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮
冲方 丁 (2003/05)
早川書房

この商品の詳細を見る

2004年版SFが読みたいで国内編一位に輝いた作品。書店で見かけて一巻を衝動買いしてしまった。全三巻なので、一巻がつまらなければ残りを買わなくていいと思ったからだ。

最初の数ページを読んだときは、はずしたかと思った。台詞回しがくさいというか、不自然に感じられたせいだ。しかし、だんだんそれも気にならなくなった。

主人公はバロットという少女娼婦。シェルという男に拾われ十分な暮らしを与えられたが、ある時シェルはバロットを車に残したまま焼き殺そうとする。バロットを救ったのは「ドクター」と「ウフコック」というシェルを追っている事件屋。ドクターはバロットに新しい能力--電子干渉能力:皮膚に移植された神経で肉体外部に電子的な干渉を可能とする能力--を与え蘇生させる。バロットは自分が殺されかけた理由を知るため、万能兵器のネズミ、ウフコックを相棒にシェルの秘密を追う。秘密が暴かれるのを恐れたシェルはバロットの命を再び狙う…。

自らの有効性を証明し続けなければ、社会で存在することが許されないドクター、ウフコック、バロット。お互いの感情が交差する中、戦うことで決着をつけようとする。

二巻では、シェルの記憶を暴くため、バロットたちはシェルの運営するカジノに潜入する。そこで、カジノを相手にとんでもない勝負を仕掛ける。このシーンはバロットたちと、ほかのカジノの客、そしてカジノのディーラーとの心理戦と計算ずくめの勝負が圧巻。

私は、カジノもポーカーも、ルーレットとも無縁な生活を送っている。せいぜいドラクエのカジノで気まぐれで遊んだ程度だ。そんな、賭け事の面白さを良く知らない私にも、このシーンの緊張感は思いっきり感じ取れた。まさに息をする間すら惜しんでページをめくった。

そして最後は、重力を操る宿敵ボイルドとの避けられぬ戦闘。弾丸を弾丸で跳ね返すというとんでもない技を当たり前のように繰り出すバロットと血みどろの死闘を繰り広げる…。


小難しい科学技術の説明なんかは一切なくて、世界観さえつかめれば勢いよく読める作品だ。「ライトノベル完全読本」にも紹介されているようなので、SFというよりはライトノベルよりの本なのかもしれない。



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。