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MM9 - エムエムナイン -

2011年10月14日 00:10

ずいぶん前に読んだ本だけど、最近続編も出たみたいだし、せっかくだからパラパラ読み返しつつご紹介。

MM9 (創元SF文庫 )MM9 (創元SF文庫 )
(2010/06/24)
山本 弘

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地震や台風などの自然災害に加え、怪獣災害というものがある世界(っていう設定を見た段階でシムシティ2000を思い出した)。世界有数の怪獣大国日本。だが甚大な被害をもたらす可能性がある怪獣に立ち向かうのは、アメコミ的ヒーローでもなく、宇宙から来た正義の使者でもなく、カラフルな五人組戦隊でもなく、怪獣対策のスペシャリスト「気象庁特異生物対策部」通称「気特対」、つまりは国家公務員である。怪獣の早期発見、データ収集・観測、被害規模の予測、警報の発令、そしてその撃退方法のアドバイスが主な任務である。気特対は怪獣を迎撃する攻撃手段を持ち合わせていないので、直接怪獣と戦うのは自衛隊ではあるが。

怪獣はその規模にあわせてMM0からMM9までで評価される。MMはモンスター・マグニチュードの略だ。

「怪獣の体積が2.5倍になれば、人口密集地に及ぼす最大の被害は四倍になる」とガスリーは唱えた。怪獣の皮膚の厚さは体積の立方根に比例し、厚くなるほど弾丸は貫通しにくくなる。怪獣を殺すのに必要な累積ダメージは体積に比例する。単位断面積あたりの骨や筋肉の強度は体積の三分の二乗に比例し、地上での移動速度は体積の六分の一乗に比例する。建造物に加えられるダメージの大きさは体積の四分の一乗に関係する……といった要素すべて加味すると、怪獣が人口密集地に侵入した場合、軍に倒されるまでに最大どれだけの破壊を繰り広げるかが求められるというのだ。

(中略)現在は同体積の水の重量に換算したトン数を基準にMMが算出されている。MM0は1トンの水に等しい体積の小型怪獣で、MMが1上がるごとに体積は2.5倍になる。

兵器の殺傷能力が100年前よりも増大したこと、堅牢な高層ビルが増えたことなどにより、現在ではガスリーの法則は成り立たなくなっている。それでもMMは怪獣の脅威を予測する目安として使われ続けている。

数字が一つ上がるにつれ、被害規模は格段に大きくなる、というところは地震のマグニチュードと同じ。怪獣の予想進路等発表しながら警報を出していく様はさながら台風。

数百トンを超える体重の巨大生物は、科学に照らし合わせると己の体重を支えきれないはず。それなのにMM5を超える怪獣達は地上に現れ、二本足で闊歩したりする。怪獣には人類が知っている物理学は通用しない。というのも、怪獣は人間が属する「ビックバン宇宙」とは異なる「神話宇宙」の法則に支配される存在だからである。

そんな人知の及ばない怪獣相手に日々奮戦する気特対。彼らの前に、一糸まとわぬ少女の姿をした怪獣(テレビ中継はモザイク付き)が現れたり、怪獣を使ったテロを企てる組織の存在が明らかになっていったり……。そして観測史上最大、伝説級のMM9怪獣が日本で目覚めてしまう。

怪獣に有効な必殺技を持つわけでもなく、ヒーローのような華々しい活躍をするわけでもなく、愛と勇気だけで人類が救えるわけでもなく。マスコミからの批難にさらされながらも、懸命に仕事をこなす命がけの現場、責任という重圧に耐える本部。SF的理屈付けに人間ドラマをおり混ぜたリアリティあふれる怪獣モノ。災害を扱った作品をエンターテイメント小説と称するのにいささか抵抗はあるが、己らの力の限界を知りつつも、人を助けるため困難に立ち向かう隊員たちの姿には励まされるものがある。そしてラストに示唆されるこの世界のひとつの可能性。なんかもうわくわくが止まらない。


特撮モノを題材にしたSFには昔紹介したΑΩもある。MM9と切り口が全く違っていて比べてみるのも面白いかもしれない。

そういえばMM9は去年連ドラ化されたそうだが、全くノーチェックだった。DVDででも見てみようかな。


山本弘のほかの作品:
神は沈黙せず
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神は沈黙せず

2005年08月26日 00:00

神は沈黙せず 神は沈黙せず
山本 弘 (2003/11)
角川書店

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久しぶりに読み応えのある本にめぐり合えた。

作者の山本弘は「と学会」の会長でも有名。さすがにトンデモな事柄をウォッチしているだけはあるなと思った。ものすごい量の超常現象・UFO・超能力・ファフロニツキーに関する記述はまさに圧巻。ここまで色々と理屈っぽくやられると、何処から何処までか現実で何処からが虚構なのかわからなくなってくる。とりあえず気になった「ウェッブの網目」と「パイオニア減速問題」を調べてみた。ウェッブの網目とは、ハッブル宇宙望遠鏡以上の解像度を持つ望遠鏡で太陽系以外を撮影すると、網目のようなムラが現れてしまうという現象だ。パイオニア減速問題とは、太陽系外に飛び出したパイオニア10号11号ヴォイジャー1号2号が計算に反し徐々に減速している問題で、この減速問題のほうは現実の問題だったようだ。

http://archives.cnn.com/2001/TECH/space/05/21/gravity.mystery/index.html

一方でウェッブの網目は完全なるフィクション。思わず騙されそうになってしまったではないか。まあ、こういうふうに面白いように騙してくれるのがハードSFの醍醐味でもあるわけだが。

テーマもなかなか重厚で好い。神は存在するのか。なぜ悪や災害を容認しているのか。我々は神にとってどのような存在なのか。宗教は信じないが、神(というか人類より上位に位置する者)の存在は信じてもいいと思っている私にとって、非常に興味ある内容であった。ちなみにラストのヨブ記は誤訳か、というのが本当かどうか現在調査中。


物語の舞台である10年代(2010~)、ネットはとてつもない影響力を持つにいたった。そこに存在する情報の大半は、捏造され故意にゆがめられたものにもかかわらず。ネットに吹き荒れる誹謗中傷の嵐は、気分が悪くなるほど徹底的に個を叩き続ける。そこら辺が妙に現実味を帯びていて、恐ろしい気がする。


豊富な情報量を消化しつつ読もうとしたら時間がかかって仕方がない本だけど、エンターテイメント性も高く、苦にならずに読めた。

最後になったが、この本を私に紹介してくれた枢に感謝。



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