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たそがれに還る

2006年10月01日 00:00

たそがれに還る たそがれに還る
光瀬 龍 (1998/08)
角川春樹事務所

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長門さんの100冊のうちの一冊。

読み終わってまず調べたことが、この作品の初出。角川文庫の初版は1985年に出ていたのだが、どうやらそれ以前は早川で出していたらしい。
どうも統一性のある検索結果が出なかったのだが、いずれにせよ1963年、1964年あたりに世に出たみたいである。その後1973年にハヤカワ文庫から、1985年に角川文庫、さらに1998年にハルキ文庫から出版されたようである。

初出が60年代だということにも驚きだが、それから35年近く経ってレーベルを変えて再出版されていることにも驚きである。どうやら不朽の名作という賛辞もあながち誇張ではないようだ。

しかし、やはり60年代は60年代。アポロ11号が人類初の月着陸に成功したのが1969年7月20日のことである。当時のNASAのコンピュータは大きな部屋を丸々一個占める大きさで、それでいてその性能はファミリーコンピュータにも劣るものだったと聞く。だが64年にしてみれば、月に行くなんてまだ夢物語で、巨大なコンピュータ頭脳、キーパンチカードなどが最先端技術として目に映っていたのだろう。そのことを考えれば、たそがれに還るの舞台が少し古臭く思えるのも仕方のないことなのだ。キーパンチカードなんて今ではほとんど表舞台に現れないが、そこは目をつぶるしかない。

さて、そういった科学技術の遅れさえ取り除けば、なかなか胸高まるSFであったように思う。

金星に起こった異変。突如調査局員シロウズの目の前に現れた人類によるものではない巨大な建築物の廃墟。そして過去か未来かあるいは他の次元の何者かが人類に告げる、悲劇の予感。空間のひずみにはまり込み行方不明になる大船団。冥王星の地中深く、千二百万年前の地層から発見された宇宙船。再び告げられる<無>と<終焉>の予感。また地球でも別の異星人の宇宙船が発見される。その宇宙船から回収された記憶媒体。その解析により、遠い過去に起こった二つの種族の戦いの歴史が明らかになる。そして“セル”の方向からやってきたなにかに怯えていたことも。<無ハセルニアル> この記録の意味する真実とは。人類は過去の二つの種族を滅ぼしたその危機に今も面しているのだろうか。人類はその未来をかけて、迫りくる災厄のかたちを知ろうとした。太陽系の外に前哨基地を設け、巨大なレーダーでその存在を探るプロジェクトを開始した・・・。

積み重ねられる謎。そこから導き出される<無>の接近。しかし、人類は何もまだ知らないのだ。<無>が何であるかさえ。

全てを賭けて築かれる人類のトリデ。その建設主務者となったシロウズ。この破滅に立ち向かうための資料を今に伝えるために生きつづけて来た女性。そして人類の明日の全てが。たそがれに飲み込まれる・・・。



こういう虚無感は嫌いじゃない。

人類は広大な宇宙の中では決して主役などではないのだと。
人類は無力なのだと。
人類はちっぽけなのだと。

それでも生き続けるのだと。
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